
狭い店舗でも効率よく使いこなし
最大限のパフォーマンスを上げる
目次
(前編はこちら)(後編)
(コーナー)
だから、cottaが好きOYATSUYA SUN
「なくても困らないけれど、あったら人生が楽しくなるもの」をコンセプトに、スコーンやマフィン、フォンダンショコラやパウンドケーキなどの焼き菓子と、シングルオリジンのコーヒーを提供。テイクアウトを中心にしつつ、店内のカウンターやベンチでのイートインも可能。月に一度、夜の営業もあり。12:00〜18:00(水曜のみ〜16:00) 月火定休(水曜不定休)
https://www.instagram.com/oyatsuya_sun/ https://www.oyatsuyasun.com/
通販専門を終えた後の展開は8坪に広げた店舗から
「北欧、暮らしの道具店」との合同会社をやめ、独立して新たに店を構えることにした梅澤さん夫婦。
「資金は、貯めていたお金と、公庫からの借入を合わせて800万円。そのうち150万円が物件の取得などにかかった費用で、400万円は内装、170万円がエスプレッソマシーンなどの新しい機器に当てました」
5台に増えていたオーブンは2台へ減らし、スタッフは夫婦を含めて3人。一度広げた事業を縮小してのスタートです。

▲なるべく広く感じられるよう、随所に曲線を取り入れているのだそう。カウンターの角もアールになっているので圧迫感が軽減されています。
「8坪という広さを考えるとそれくらいがちょうど良いかな、と。3坪で店を始めた時のように、無理をしないように考えました」
とはいえ、認知度は格段に上がっています。作るお菓子の量や種類も増えているので、それなりに材料も必要です。
「大量にストックするスペースが確保できないので、こまめに発注をしています。粉だと25〜30kgずつです。手間もコストもかかるのですが、材料を新鮮なうちに使い切るという意味でも良いかなと思っています」

▲作業台の上下を有効活用して、材料や道具をうまく収納。コックピットのように手を伸ばせば必要なものに手が届く厨房になっています。
商品ロスを防ぐ対策はテストマーケティングにあり
それまで試作をしても売ることの叶わなかったお菓子を含め、作りたいものを作って販売しながら、新しい立地でのニーズを探っていくようにしたそう。
「桜新町は、チャレンジしたおやつをおもしろがってくれる人が多い。例えばゴルゴンゾーラチーズを丸ごと入れて焼いたマフィンが人気だったりするんです。甘いものに限らず、お酒に合うようなものも反応があるし、おもしろいなと感じています」
店を始めるきっかけとなったフォンダンショコラなどの定番商品に加え、「洋梨とアールグレイのマフィン」や「あんずとジャスミンのパウンドケーキ」「新玉ねぎのホットビスケット」など、旬のフルーツや野菜を使ったものも人気です。

▲スコーンやマフィン、パウンドケーキなどが並ぶショーケース。定番から季節限定のものまでどれも人気で、普段のおやつとしてはもちろん、手土産として購入する人も多いそう。
「出すものがすべて完売するわけではないので、残ったものについては翌週は作らずに新しいものを並べてみたり、あれこれ試行錯誤しています。少数精鋭で作っているからこそ、そういうことに柔軟に対応できるのかもしれません。なるべくロスが出ないように考え続けています」

▲その日のスペシャルティコーヒーについての説明。相談すると、梅澤さんが焼き菓子に合わせた味を提案してくれます。
また、エスプレッソマシーンやグラインダーを新たに投入しただけあり、コーヒーにもこだわりが。
「『NOZY COFFEE』さんから仕入れています。シングルオリジンでスペシャルティコーヒーだけをお出しするようにしていて、焼き菓子に合わせて提案しています」

▲一人でも短時間でおいしいコーヒーを提供できるようにと、新たに店を構えるにあたってこだわったエスプレッソマシン。
接客から得る情報は、ほぼ100%店舗運営に反映!

▲外には気軽に腰を下ろせるベンチもあり。買い物帰りのお客様が休憩に立ち寄りやすいようにしています。
8坪と狭いながらも、カウンターテーブルや外の席もあるので、さっと食べて飲んでほっと一息ついているお客様も多いそう。
新たに2度目の店舗を構え、梅澤さんが大事にしているのは「いろいろな人の話を聞くこと」だと教えてくれます。
「お客様からのご意見はとても大切で、あえてこちらから聞くようにしています。味についてはもちろんですが、営業時間がもっと早い方がいいか、遅くまでやっている方がいいのか、お酒があったら嬉しいか……いろいろ。お客様に限らず『NOZY COFFEE』さんやワインのインポーターさんなどの仕入れ先にも、現地の話やどんなものが今おもしろいのかなど聞くようにして、今後に活かしたいなと思っています」

▲「たとえば、その日の最後のお客様には『もう1時間遅くまでやっていたらどうですか?』とご意見を聞いたりして、参考にしています」
現在の営業は、12時から17時。月に一度「オヤツナイト」として、営業時間を後ろにずらしています。
「いつも焼き菓子とコーヒーにプラスして、自然派ワインとワインに合うお菓子をお出ししています。いつかは、昼はおやつとコーヒー、夜はワインと軽食という形態をやってみたくて」

▲やりたいこと、思いついたことを梅澤さんがちあきさんに提案し、二人で相談して進めていくというスタイル。
そんな今後の展開を見据え、スタッフを増やす予定だそう。そうすれば、営業時間を伸ばすことも、営業日を増やすこともでき、目指すスタイルの店に近づけると考えています。
「やってもやってもやりたいことが出てくるんですよね。お客様の反応をみながら、もっとこうしたらいいかもと考えると、余白は一生埋まらないのかもしれません。とにかくやってみようと思っています」
100%の準備が整わなくても、まずはやってみる。梅澤さん夫婦はそうして自分達の道を切り開いてきました。これからもその姿勢は変わらずに、新たな店の形を模索し続けていくのです。
だから、cottaが好き
●会社じゃなく個人口座でも登録できたから
お店を始める際に助かったのは、資材や材料を個人口座でも購入できたこと。法人口座を求められるサイトが多かったので助かりました。オープン当初からリピートしているのは「くりかえし使えるオーブンシート」。

●小ロットでオリジナル資材が作れるから
焼き菓子を入れている袋には、「OYATSUYA SUN」のロゴをプリントしています。小ロットでも作れるので、すごくありがたいです。

取材・文/晴山香織 撮影/田中館裕介