パン作りに欠かせない酵母
パン作りには「酵母」が欠かせません。酵母が糖を取り込んで炭酸ガスを発生させることにより、パンは膨らむからです。
この酵母で有名なものが、「天然酵母」と「イースト」。それぞれ生タイプ(生種)とドライタイプ(乾燥酵母)があります。
今回は、ドライタイプの「天然酵母」と「イースト」を同じレシピで焼き比べてみました。
「天然酵母」と「イースト」って何が違うの?
天然酵母
果物や穀物など自然のものに付着した酵母菌を発酵させたもの。さまざまな種類があり、発酵力が弱くて発酵に時間がかかります。
複数の酵母菌や乳酸菌が混在して、自然の力でゆっくり発酵することで奥深い味わいのパンに。
イースト
果物や穀物の中からパン作りに適した酵母だけを人工的に集め、純粋培養したもの。化学的に作っているわけではありません。
発酵力が強く、短時間でのパン作りが可能です。
単一酵母なのでクセがなく安定したパンに。
「有機穀物で作った天然酵母」と「赤サフ」で焼き比べ
酵母の分量を2gで統一し、その他の材料や手順など全て同じレシピで作ります。
今回使用する「パウンド型食パン」の詳しいレシピページはこちら。
ドライタイプの酵母は、「有機穀物で作った天然酵母」と「サフ インスタントドライイースト(赤)」を使用しました。
有機穀物で作った天然酵母
100% オーガニックの穀物を栄養素にして作ったドイツ産の天然酵母で有機JASを取得。非遺伝子組み換えの原料を使い、化学薬品などは一切使っていません。
イーストが大量生産される前の時代の、素朴な原料と方法によって作られた酵母です。
サフ インスタントドライイースト(赤)
世界最大のイーストメーカー、フランスのルサッフル社の主力であるインスタントドライイースト。日本では「赤サフ」の愛称で親しまれています。
生地中の糖分が少なくても優れた発酵持続力を発揮する、低糖性のイースト。イースト臭が少なく、発酵の香りを生かすことができます。
さまざまな角度から違いをチェック
酵母の色・香り
有機穀物で作った天然酵母
茶色く、香りが強い。
イースト臭とは少し違い、泥が混じった穀物のような香り。
赤サフ
ベージュ色で、香りが薄い。
癖のないイーストの香り。
こね
有機穀物で作った天然酵母
生地に弾力があって、こねるのに少し力が必要。
赤サフ
伸びのいい生地でこねやすい。
発酵時間
有機穀物で作った天然酵母
発酵が遅い。
赤サフ
同じ分量だと、「有機穀物で作った天然酵母」に比べて2倍近く発酵が早い。
発酵の膨らみ具合
有機穀物で作った天然酵母
横に少しだれて発酵する。
赤サフ
全体が丸く膨らんで発酵する印象。
窯伸び
「赤サフ」は「有機穀物で作った天然酵母」より発酵力が強いので、よく膨らみ窯伸びする。
パンの風味・食感
有機穀物で作った天然酵母
穀物系の香ばしい風味で、噛むほどにに甘みが出てくる。
他の天然酵母(ホシノ天然酵母、白神こだま酵母、自家製酵母など)に比べると味が濃くなくすっきりとしている。もちもちした食感。
赤サフ
あっさりした風味でクセがない。ふんわりして軽い食感。
まとめ
天然酵母といえば初心者には難しく、手間暇がかかるイメージがあります。
でもこの「有機穀物で作った天然酵母」は、酵母おこしや予備発酵は不必要で、冷蔵庫で長期間の保存が可能。
量を増やせば発酵もスムーズです。
自家製酵母ほど芳醇な味わいはなく、イーストほど発酵力は安定していませんが、気軽に風味豊かな天然酵母パンが焼きたい!という方にはぴったり。
シンプルな食事パンだと酵母の味をダイレクトに楽しめますよ。
一方の「赤サフ」は、何といっても安定した強い発酵力が魅力的。
クセのない風味なので、菓子パンや惣菜パンに使用すれば具材の邪魔にならずバランスよく仕上がります。
酵母を生かしたパン作りを
今回は「天然酵母」と「イースト」の特徴を比較しましたが、いかがでしたか?
それぞれのメリットを押さえ、目的・用途・好みによって酵母の種類を使い分けてみましょう。
酵母を使いこなして、パン作りをもっと楽しめたらいいですね。
赤サフ・青サフ・金サフの違いについては、
chiyoさんのコラム「赤サフ・青サフ・金サフの違いは?サフ焼き比べ」で詳しく解説されています。